まだ6月に入ったばかりなのに台風が来ましたね。水不足の地域もあったので恵みの雨になったところもあったとは思いますが、皆さんのお住まいの地域では被害などはなかったでしょうか?
さて、皆さんは野菜などを栽培したことはありますか?農家さんや家庭菜園をやられている方は分かると思うのですが、米や野菜を作っていると色んな動物がそれらを狙って食べに来ます。僕が米や野菜を作っている広島県安芸太田町ではイタチ系の小動物や、たぬきやアナグマなどもきますし、鹿やサルも来ます。最近はなぜかイノシシはまったく来なくなりました。山間部ではなくてもよく来るのはカラスじゃないでしょうか?カラスはトマトやキュウリなどを狙ってよくくるので、ネットで天井を覆います。
しかし、まったく違った方法でカラス対策をしていた93歳のおじいさんがいます。僕の芸北分院にもよく来てくれていた方なのですが、実はそのおじさんが5月の末に天に召されてしまいました。今日は弔いの意味も込めて、そのおじさんのお話を。
そのおじさんは足元は少しおぼつかない感じはありましたが、93歳とは思えないほど筋肉がしっかりあって、見るからに頑丈そうな体つきでした。
奥様は介護施設に入られているので、お一人暮らしだったのですが、5反(ちなみにサッカーコートは約7反)もの畑で色んな野菜を作られていました。玉ねぎは3000本以上、大根やサツマイモなどは500本以上、山芋など手のかかるものも。そんなにたくさん作られているので、てっきり出荷しているのだとばかり思っていましたが、全部タダで配っているんです!もちろん、頂いた方はそれぞれになにかしらのお礼はしているとは思いますが、お金を請求することは全くなかったそうです。
90過ぎのおじいさんがですよ。これだけでもとんでもないことなのですが、実はこのおじさん、以前は解体作業のお仕事もされていたようなのですが、今日で定年退職という最後の日の夕方、高所から転落してしまい、首の骨を折る大けがをしてしまったのです。本人は意識不明のまま病院へ救急搬送され、気が付いた時には病院だったそうです。
目が覚めたおじさん、どうしたと思います?
「小便に行きたい」と思い、ベッドからむくっと起きて歩いてトイレに向かおうとしたのだそうです!
まさか本人は首の骨が折れているだなんて聞かされてませんから、当たり前のようにトイレに向かおうとしたそうなんです。びっくりしたのはその姿を見た看護師さんたち!首の骨が折れているのですから、首から下は動かなくなることもありますし、まさか立って歩くだなんて思ってもみなかったでしょう。
「〇〇さん、動いちゃダメ!」って大慌てで飛んできたそうです。
おじさんはなんのことやら。
「わしは小便にいきたいんじゃ」と普通に答えたそうです(笑)。
その後、8ヶ月の間、ベッドに括りつけられたそうです(物理的に縛り付けたかどうかは分かりませんが)。
なんの後遺症もなく元気になられたのは本当に奇跡です!
それから、肝臓を患い、3度の手術。90歳の時には脳梗塞をしたのですが、それでも後遺症は皆無。本当にすごい生命力!
しかしながら、去年の夏前に以前から悪かった肝臓についにガンができてしまい入院することに。そして、放射線治療がはじまりました。
近所の方々は「さすがにもう帰って来れんかもしれんね」と心配していましたが、なんと退院してきたんです!しかも、翌日から普通に畑に出ていたらしい(◎_◎;)
そして、「久しぶりに畑にでたら腰が痛うなったんじゃが、見てもらえんじゃろうか」と9月に整体に来てくれたんです。
でも「体はまあなんともないんじゃが、飯が旨うないんじゃ」と。
放射線治療の副作用なのか、味覚がほとんどなく、食欲が全くわかなくなってしまっているようでした。
それから、「冬の間はちーと休ませてもろうて、春になったらまた来さしてもらうけぇ」と言い残して、12月の初めに来てくださってからはお会いしてませんでした。
春になってもおじさんは整体には来られませんでしたが、近所の方に聞くところによれば、相変わらず畑には出ているとのことで、安心していました。
5月の下旬、芸北分院「雲水月庵(うづつきあん)」の裏庭の草刈りをしていたところ、車のクラクションが長く響きました。ふと顔を上げると、川向こうの家から霊柩車が出発するところでした。僕はそのおじさんの家がどこか分からなかったので、「あそこのお宅のどなたかが亡くなられたのか」と思い、草刈り機から手を離し、合掌して見送りました。
翌週、整体をしていた時に患者さんが「そういえば〇〇さん、先週亡くなられたんよ」と。
驚いた僕は「〇〇さんの家って、ひょっとしてあそこですか?」と聞くと、「そうそう」と。先週、僕が見たあの時の霊柩車はあのおじさんを載せていたのだと、その時知りました。
あの不死身のおじさんが・・・。
整体をしている時に色んなお話を聞かせてくれて、農業のこととかも色々と教えてくれたあのおじさんが・・・。
50歳を過ぎるとそれなりに歳をとったななんて思っていたけど、このおじさんに会ってからは、「50歳なんてまだまだヒヨッコ。このおじさんのように90までは現役でいる!」と決めていたんです。
そのおじさんが亡くなる前日に会いに行ったという患者さんから聞いた話によると、亡くなるその日まで、1人で生活をし自分で歩いてトイレにも行き、近くのお寺には「これで葬式をあげてくれ」とお金を渡していたとのこと。ただ、数日前から水も飲めなくなっていたそうで、その日は離れて暮らす娘さんが「今日は泊まっていくことにします」と話していたとのこと。そして、その翌朝、息を引き取ったとのことでした。
見事すぎる!
僕もそうやって最後の最後まで自分のことは自分でやれるようなじいさんになりたいと思いました。
おじさん、本当にありがとうございました。どうぞ、安らかに。とは言え、あのおじさんのことだから、極楽でも畑仕事をして、みんなに野菜を配っているかもしれません。
そうそう、そのおじさんがどうやってカラス対策をしていたかというと、なんと、庭先にドッグフードを置いて、カラスを手懐けていたんです!
そうすると、畑の野菜にはまったく手をつけないようになったそうなんです。毎朝、つがいでやってきては、玄関先で「カー!」と鳴き、おじさんに餌をせがんでいたそうなんです。
それどころか、他のカラスが畑にやってくると、つがいで追い払っていたそうなんです!
敵を味方にしてしまう、まるでドラゴンボールの悟空かのよう!
あのおじさんには本当に色んな大事なことを教えられました。
今、雲水月庵でこの文章を書いているのですが、カラスの鳴き声が。
ひょっとしておじさんが手懐けたカラスかも。


